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【イベントレポート】工場見学からレクチャー、鑑賞まで。たっぷりとピアノの魅力に浸る一日「ピアノづくしの旅2018」 ~2018年8月9日開催~

【イベントレポート】工場見学からレクチャー、鑑賞まで。たっぷりとピアノの魅力に浸る一日「ピアノづくしの旅2018」 ~2018年8月9日開催~

会員限定イベント「ピアノづくしの旅2018」開催

2018年8月9日(木)、ヤマハミュージックメンバーズ会員限定イベント「ピアノづくしの旅2018」が開催されました。 今回のイベントでは、静岡県のヤマハ掛川工場でグランドピアノの製造工程を見学した後、ピアノ調律師の村上輝久さんによるレクチャーとピアニスト三舩優子さんのミニコンサートを楽しみます。
村上輝久さんは、1966年から1970年まで音研究のためにヨーロッパへ渡り、ミケランジェリやリヒテルなど巨匠たちの絶大な信頼を得て、専属ピアノ調律師を務めました。三舩優子さんは桐朋学園大学在学中に第57回日本音楽コンクール第1位を受賞。人気、実力ともに日本を代表するピアニストとして活躍しています。

「ヤマハピアノのふるさと」掛川工場へ

この日は多数の応募のなかから抽選で選ばれた40人の方々が、北海道から四国まで全国各地から集まりました。
ヤマハ掛川工場までは、掛川駅からバスで15分ほど。ヤマハのピアノは掛川工場から日本各地、そして世界へ出荷されるため、ここは「ヤマハピアノのふるさと」と呼ばれています。

ショールームであるハーモニープラザに足を踏み入れると、歴代のヤマハピアノをはじめ、エルトン・ジョンの映像に連動して演奏を奏でるピアノなど、貴重なピアノの数々が迎えてくれました。

工場見学は、紹介ビデオとスタッフの案内からなる約90分のツアー。フレームや本体の製造については、危険が伴ったり作業場所が離れていたりするため、これらの工程は10分ほどの映像で紹介されます。幼いころからピアノを習っていたという落語家の柳家花緑さんがナビゲーターを務めるバーチャルツアーの映像は、第一工程である製材から説明されていて、わかりやすくてユニーク。さらに目の前にあるヤマハのハイブリッドピアノ「ディスクラビア」が、映像に合わせて自動演奏する様子も楽しめます。

ハーモニープラザには、左右半分に切断されたグランドピアノも展示してあり、スタッフがピアノの構造について解説。鍵盤を押すとハンマーが弦を叩くしくみを実際に目で確かめられるだけでなく、羊毛のフェルトを使ったハンマーの実物に触れることもできるとあって、いいイントロダクションとなったようです。

ここから、いよいよ工場内へ。1900年からピアノを作り続け、受け継がれてきた伝統の技と現代テクノロジーを駆使して作業する職人たちの様子を見学します。230本もの弦を1本ずつフレームに張りつける「張弦」や「調律」、部品の細やかな動きを調整する「整調」、ピアノを慣らすために一定期間保管する「シーズニング」、ハンマーの形や硬さを調整し、豊かな音色をつくる「整音」……。スタッフの説明とともにさまざまな工程を目の前にし、参加者の方々は感心しきりの様子です。

1日に製造されるグランドピアノは30台ほど。1台つくるのに1年~1年半、コンサートグランドピアノCFXはさらに特別な工程を踏むため約3年かかるそう。「息子のためにグランドピアノを買ったんですが、正直高いと感じていました。でも、このように手づくりされているのを見ると、それも当たり前だなと思いましたね」と参加者のひとり。「木を切る・選別するところから始まり、多くの方の手と長い時間を経てピアノがつくられていることがわかって感動しました」という声も聞かれました。

製造工程を見学した後は、ハーモニープラザ内の選定室へ。同じモデルの3台のグランドピアノが演奏され、細かな音色の違いを聴き取るというデモンストレーションが行われました。
見学ツアー終了後は、展示されているピアノを見たり、記念撮影をしたり。ここには、見るだけでなく実際に触れて音を出すことができるピアノもたくさんあります。別ブースには、リヒテルが使用したコンサートグランドピアノが展示され、参加者のひとりが演奏を楽しんでいました。

日本のピアノ調律の第一人者 村上輝久さんによるレクチャー

ここで掛川工場を後にし、バスで浜松市へ移動。オークラアクトシティホテル内「フィガロ」でランチブッフェを楽しんだ後は、ヤマハミュージック浜松店のホールで「いい音ってなんだろう」と題したレクチャー&ミニコンサートが開催されます。

登壇した村上さんは、1967年にフランスで開催されたマントン音楽祭での仕事が「すべてのピアノをストラディヴァリウスのように変える東洋の魔術師」と讃えられた日本のピアノ調律の第一人者。そのお話に期待を寄せて参加した方々を前に、まずはチェンバロに始まり、現在のピアノが生まれるまでの経緯と時代背景についてレクチャーします。

バッハやスカルラッティらが活躍したバロック時代は、音が減衰してしまうチェンバロを使っていたため、テンポよく弾いていること。1709年にピアノが発明されると古典派の時代が到来し、モーツァルトやベートーヴェンが活躍。さらに産業革命を経て工業化時代に入るとピアノはどんどん発展し、ショパン、シューマン、リストというロマン派の時代へ。鍵盤数やペダルについての時代変遷の説明もあり、参加者たちは熱心に耳を傾けていました。

さらに、アップライトピアノとグランドピアノの違い、ピアノの音色の違いやピアノの演奏・表現技術などについてのお話を絵や演奏を交えながら説明。ミケランジェリやポリーニ、ギレリス、リヒテルなど巨匠ピアニストたちとの興味深いエピソードも次々と飛び出します。

その後は、村上さんと三舩さんによるトークタイム。「調律師さんは、調律を通してピアニストがどんな人柄か感じてくださいます。それを知ることによって調律の仕方が変わると村上さんはおっしゃっていました」と三舩さん。

「調律師は新しいピアニストに頼まれたときには、その人の演奏中の写真、姿を見ます。背の高さ、椅子の高さ、鍵盤と人間との間隔……そういったものから、『この人はこういう感じのタッチが好きではないだろうか』と想像します。だいたい当たることの方が多いですね。そして私がよく弟子にいうのは、『個性を持て。でも自分の個性を出してはいけない。演奏家の個性を出すのが調律師の仕事である』ということです」という村上さんの言葉も印象的でした。

 

ピアニスト三舩優子さんによるミニコンサート

休憩をはさみ、三舩優子さんによるコンサートがスタート。今回のプログラムはレクチャーの内容に合わせ、歴史ごとに組んだものだそう。

「大きく4期に分けています。作品を通してピアノの変遷が分かると思います。鍵盤をここまでしか使っていないとか、感情の入れ方、ペダルの使い方も全部違うのでそのあたりを感じていだだければと思います」(三舩さん)

まずはバロック時代のスカルラッティ『ソナタ』よりK.159、K.64、K.1の3曲を、続いて古典派の時代の作品としてベートーヴェン『ピアノソナタ』を演奏し、シャープで切れのあるタッチで会場を魅了。そして、ロマン派の時代からはショパンの『小犬のワルツ』を。1900年を跨ぐ形で活躍し、今年没後100年を迎えるドビュッシーの『沈める寺』では、がらりと変わって神秘的で幻想的な美しい音を響かせます。今回のなかでは一番新しい作曲家、ヒナステラの『アルゼンチン舞踊曲集』でプログラムを終えると、会場からは大きな拍手がわき上がりました。

鳴り止まない拍手に応え、三舩さんがアンコールの曲として選んだのはラフマニノフの『鐘』。
「いろいろな方が弾いていらっしゃいますが、村上さんのお話にも出たギルレスのバージョンが私は一番好きです。近づけるでしょうか」と三舩さん。その演奏は華があってダイナミック。聴き手の心を揺さぶりました。

「村上さんのお話はとても良かったです。とくにピアニストとの関係などいいお話を聞かせてもらいました」「村上先生の人柄、調律というお仕事のすばらしさ、そして調律が演奏家にとってとても大事なことだということが分かりました。工場見学から全部つながって成り立っているのだと思い、すべてのことに感激しました」「三舩さんの演奏はレクチャーと連動していたので、これまでとは違う聴き方ができて、新しい発見がありました。演奏はすばらしかったです」など参加者の方々はイベントを満喫されたようです。

文 福田素子
写真 村川荘兵衛

今年も「ピアノづくしの旅」開催します!

参加者募集中!ご応募は6月24日(月)17:00まで。

「ピアノづくしの旅 2019」開催概要、参加申し込みはこちら

レクチャーコンサートのみを8月10日(土)ヤマハ銀座コンサートサロンで開催します!

「~いい音ってなんだろう~ レクチャーコンサート」開催概要、参加申し込みはこちら

最終更新日:2019年5月30日(イベント情報を追加しました。)
初回公開日:2018年12月27日

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