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ジャズマンと役者(Z BLOG 菅野 浩)

先日、あらゆる世代のジャズマン達とセッションする機会があった。学生の頃からの憧れの先輩プレイヤーから20代まで。アルトサックス奏者だけで10人近くいたのではなかろうか。まさに十人十色でじつに面白いセッションだった。
 

自問自答の20代


自分が学生の頃は、憧れのプレイヤーと一緒にセッションする機会があったら、憧れるがゆえに真似したくなる衝動に駆られていた。
身近なプレイヤーの真似をすることで学ぶことは多かったけれども、同じ土俵で演奏家としてやっていこうとした時、それはジャズの世界ではご法度である。
とは言え憧れのプレイヤーの器に値するオリジナリティをどうやって自ら構築したら良いのか。
オリジナリティって何?
俺って何?
という自問自答を繰り返す20代を過ごしていた。
 

自分の生きるポジション


僕は日頃からテレビドラマや映画などをよく見ている。そこに登場する役者の演技やちょっとした所作からその役者が何を考えてこの役を演じているのかと想像したり、古い映画では後に有名になった俳優の若い姿を偶然見つけることもでき、この人、あんな役もやっていたのか、などとひとりで感心していたりする。

まぁ、役者さんの生き様や思考にとても興味があるのだ。

若い頃から大スターとなり、今でも様々な主役を演じ続ける名優もいれば、
永年名脇役を演じる人、
ずっと不幸な役を演じ続ける人、
ずっと悪役の人、
ずっと刑事役の人、
ずっと笑いを取り続ける人、
ずっとかっこいい人、
ずっと綺麗な人、
ずっとアクションばかりの人。

それぞれの役者は顔も体格も違い、セールスポイントも異なる。
主役を張れなくとも名の通った人は皆大物だ。
小物ではない。
理由は、その役者の心の器の広さや信念の強さではなかろうか。
同時代に生きる人との相対的なバランスの中で自分の生きるポジションを全うしているからだ。
自分がやりたいこと、
自分に似合ってること、
自分の出来ること出来ないこと、
自分にしか出来ないこと、
他人が自分に望むこと、
これらの条件のバランスが整った役者にはとても好感が持てる。
セールスポイントが被る役者が現れると心の隅で「でた、誰々の二番煎じ」と僕は思ってしまう。

この感じって、ジャズ界や音楽業界のアーティストにとても似てますよね?

話は戻って、先日のセッション。
集ったアルトサックス奏者は皆、オリジナリティを持ち、それぞれのポジションでプレイしていてくれたことがとても嬉しくて嬉しくて。
あ、やっぱり好きに吹けばいいんだ、と思った。
その場のアドリブの展開の仕方で熱く盛り上がっても良いし、クールに決めても良いし、外れても良い。自分の良しとすることを全うする皆の姿がとても素敵だった。
憧れのプレイヤーの先輩方が何人もいたが、昔のように彼らの真似をしたいという気持ちは一切起こらなかった。
この日はその先輩方の魅力満載の演奏を聴けて幸せだった。

僕は空腹が過ぎてヘロヘロだったけど、皆の姿に感動した夜でした。

日本ジャズのアルトサックス界、面白いです。
またこんなセッションしたいなぁ。

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