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耳コピーのススメ(Z BLOG 菅野 浩)

楽譜の移調作業を効率よく進めるために...

ジャズでアドリブを習得したい人にとって名演のコピーはとても有効な手段。巷ではソロをコピーしたコピー本が数多く出版されている。僕がその類の本に初めて出会ったのは高校生の時、チャーリー・パーカーのオムニブックだった。楽器屋でそれを見つけた途端、興奮のあまり内容を深く見ずに買っていた。家に帰ってよく見ると「for C instruments」とある。

なに~!
アルトサックス用のE♭譜しか読んだことないからダメじゃん!
どーしよー!

あ、でも移調して書き直せばいいか!

と思い、返品してE♭譜と交換してもらうこともせず、翌日から移調作業に取り掛かった。とにかく早く吹きたい気持ちが勝った。
そして数日経ったころ、異変が起きた。

ん?これは転調して書き直さなくてもそのまま読めるじゃん!

移調作業を効率よく進めるために、どうやらうまいコツを掴んだようだ。その詳述は置いといて、それからはC譜に対する拒否反応は無くなり現在に至る。
このことでC譜で書かれたピアニストやギタリストのコピー譜にも拒絶することなく読んでいけるようになった。
移調に苦労している人はとにかく書いてみるのが良いと思う。楽譜というシステムは接すれば接するほど合理的によくできていると感心するものだ。

何度も何度も聴いて楽器で合わせて採譜する

名演のコピーはオムニブックで始まった僕だが、じつはコピー本を読むより耳コピーをすることのほうが楽しい。
コピー本や教則本に書かれているどのメロディを吹くよりも、名演をアルバムごと気合入れてコピーしてみるとか、同じ場で練習している人のメロディを聴いてコピーしてみるとか、セッションで他の人のメロディをコピーしてみるとか、いままで出会ったメロディを移調して遊ぶとか。
ソルフェージュ能力というのだろうか、これを鍛える。
こんなことは今でも楽しい。

なぜ楽しいか。

目的がアドリブ習得だからだ。これらのことが習慣になるとアドリブの一つのアイディアになるし、楽器を使って自らの言葉を使った会話が楽になる。
高校生のときは先述のオムニブックにある有名なフレーズを自慢げに吹けるようにはなっていたものの、その後のアドリブ習得の際には一音一音の意味をまた一から考え直さなければならず、少しだけ苦労した記憶がある。
けれども当時自ら耳コピーをしたジャッキー・マクリーンやソニー・スティット、フィル・ウッズ、ポール・デスモンドらはすんなりと身についた感がある。

何が違うのか。

おそらく次の点の意識の差ではないかと思う。
・リズム感
・音使い
・音程感
・音色
耳コピの際は何度も何度も聴いて楽器で合わせて採譜する。その過程ではこれらの要素を自ずと習得していることにもなっていたからだ。
コピー本を読んでいるだけだと、読譜能力は上がるかもしれないが、上記の点は蔑ろにされがち。
名演に合わせてコピー本を読むのもまた注意が必要。コピー本が間違っていることも多々あるからだ。世の中には採譜を仕事にしている人もいて、その人がジャズのニュアンスを熟知しているかどうかはその譜面を読めばすぐわかる。
演者の頭の中は至ってシンプルなのに複雑なリズム表記になっているものが沢山ある。それなのに整った綺麗な譜面で、お金を払って買ったものとなると、それはとても説得力あるように思えてしまう。
そして譜面からの情報と耳からの情報の不一致は脳を混乱させる。
こういう譜面に出会ったときはやっぱり耳コピーだ。

名演のニュアンスを手に入れるために八分音符やリズムの表記をどのように書いたら良いか何日も悩んだって良いじゃないか。

suganosan_prof.jpg菅野 浩(すがの ひろし)プロフィール
アルトサックス、クロマチックハーモニカ プレーヤー
小編成から大編成まで活動の幅は広く、自己のバンド「Totem Pole」「Alto Talks」「Landmark Blue」の他、「Gentle Forest Jazz Band」「in's」などのバンドでも活動中。
近年ではクロマチックハーモニカも演奏する。

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