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若さ(Z BLOG 菅野 浩)

時の経過が早く感じるのは...

僕は今年47歳になる。
10代の頃は、出会った大人の男性が30代前半でも皆おっさんだと思っていた。いまでは自分はその年齢をとっくに通り過ぎており、年下の30代の友達が自らをおっさんと呼ぶ場面も多く散見されるようになった。
ひと学年に一人は必ずいたおっさんというあだ名の彼はいま何をしているだろうか。我が時代がやってきたとばかりにおっさんの時代をを謳歌しているのだろうか。

学生の頃は、学校というシステムがあることで、日々のハプニングが多く、学年ごとの上下関係も明確だから時の経過を今よりも的確に感じていただろう。一日一日が、今よりも長く感じられた。
世間的にミュージシャンは不安定な職業として認識されているが、それも慣れてしまえば日々のルーティンは多少の波はあれど割と安定している。日々のルーティンが安定してくると時の経過に対する認識が甘くなる。それまでの生活で上手くやれた方法に依存してしまい、その方法を繰り返してしまうからだ。そして時の経過は早く感じるようになり、一日一日が、あっという間に過ぎ去る。
ミュージシャンは、おっさんと呼ばれる年齢にもなると、演奏のみでそこそこの稼ぎがある人、演奏以外のレッスン業務や執筆等で定収入を得る人、家に引き籠り音源製作やアレンジ仕事をこなす人、音楽以外の収入源を見つけ、それとうまく収入バランスをとっている人などその生活スタイルは様々。皆、何らかのかたちで生活の基盤を築き、そのルーティンが定着している。
周りを見渡すと、皆30歳前後でその基盤を築いていたように思う。定期的に安定した収益性を伴うバンドに所属する、または自ら始めたりするのは、この頃がいちばん多いパターンではなかろうか。20代前半で試行錯誤したものがようやく20代後半になって安定性を伴ってくるパターンだ。レッスン業務やその他の業務についても大体軌道に乗ってくるのはその頃ではなかろうか。

時間に対する認識

そこで、30代以降を“おっさん“と定義したときに、おっさんの大先輩にあたる年上の先輩ミュージシャンは時間に対する認識をいったいどのようにしているのだろうか。
僕と一緒に「Alto Talks」というバンドをやっているサックスの宮野裕司さんは、この十数年(もっと長いかもしれないが)、ギターの中牟礼貞則さんとコンスタントに演奏の機会を重ねているそうだ。
宮野さんは今年72歳。
中牟礼さんは今年87歳。
もう、大尊敬で大先輩なお二人。
昨年、Alto Talksのライブ後に宮野さんと話をしていると、中牟礼さんの話題になった。
宮野さん曰く「こないだ中牟礼さんに、僕たち(=中牟礼さんと宮野さんのこと)退化したね、と言われてしまった」と。
僕は「ええ?」と思った。
大ベテランのお二人は、歳を重ねるごとによりブラッシュアップされた演奏を繰り広げており、むしろ“進化“していると感じていたからだ。「歳をとったね」とか言うではなく、「退化したね」と言うその言い回しにハッとさせられた。
話の真意はこうだ。
「10年前の自分から失われているものがある。
それは”若さ“だ。」と。
音楽的に進化している部分があっても同時に絶対的に失われているものは”若さ“である、と。
宮野さんはその会話のあと、10年前の自分の演奏を聴いて、その失われた“若さ“の存在を確認したらしい。確かにそうだった、と。
そして僕らにアドバイスをして頂いた。年齢と共に必ず“若さ“は失われていくから、今を大事にして生きなさい。と。

大先輩がたは僕よりも有意義な一日一日を過ごしているのかもしれないと思った。

suganosan_prof.jpg菅野 浩(すがの ひろし)プロフィール
アルトサックス、クロマチックハーモニカ プレーヤー
小編成から大編成まで活動の幅は広く、自己のバンド「Totem Pole」「Alto Talks」「Landmark Blue」の他、「Gentle Forest Jazz Band」「in's」などのバンドでも活動中。
近年ではクロマチックハーモニカも演奏する。

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