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謙虚と謙遜、そして称賛すること(Z BLOG 菅野 浩)

謙虚な姿勢や、他人を称賛することは大事なことだけれども、時に会話に不協和をもたらすこともある。

自分が褒められたとき

まず謙虚と謙遜にについて。
例えば、相手が自分の演奏を気に入って褒めてくれたとき、自分は、
「まだまだ褒められたものではないです」
と発言したとしよう。これは、
"今の自分の未熟さはしっかり把握してるので頑張ります"
と言う意味での発言かもしれないが、場合によっては、
"本当の自分はこうじゃないんだよね、いまの演奏で褒められても困るんだよね"
のようなニュアンスで相手に伝わってしまうかもしれない。もしこのように相手に伝わってしまったら最悪。
(良いと思ってあなたを褒めたのに私の感覚はダメってこと?)
という誤解を招いてしまう可能性がある。
このように、謙虚さを意識するあまり、自分をへり下った謙遜はいらないと思う。
僕はこの誤解を招くことを避けるために、自分が褒められたときには素直に、
「ありがとうございます」
と答えるようにしている。
謙虚な姿勢とは、自分をへり下る謙遜とは違い、このようなことだと思う。
自分が目指すところと、他人が喜んでくれるところは、なかなか一致しない。僕ら演奏者はいつも発展途上にいる感覚。その時の演奏が自分の理想に及ばない内容であることもしばしば。"自分のここがダメなんだよな~"と思う問題意識は常にあり、この理想と現実のギャップに対するもどかしさの感情も同時に抱えている状態。どうやらこの感情が、時として謙虚な姿勢をこじらせ、先の謙遜した発言をしてしまうようだ。こういうことは結構多いのではないかと思う。
いくら自分の演奏がダメだと思っていたとしても、他者が喜んで褒めてくれたのなら、素直に受け入れて感謝し、あとで練習すれば良いではないか。
このような「こじれた謙虚さからくる謙遜」はいらない。

他人を称賛するとき

逆に、自分が他人を称賛するときはどうだろう。
他人の演奏を聴いて率直に良いと思い、称賛したとする。自分の気持ちがそのまま伝われば良いが、場合によっては、
"周りのみんなが良いと言っているからその同調圧力に屈しての発言"
をしてしまうかもしれないし、たとえ本心であったとしても相手にそう受け止められてしまうかもしれない。
例えば、大人数が集まってCDなどの演奏を聴き、そこにいた先輩がその演奏を称賛したときには、そこにいる後輩たちに一気に同調圧力がかかり、場が先輩の意見を称賛するムードに包まれることがある。ここでもし、自分がその先輩と同意見でなかった場合、心は試される。
"あれ?先輩と意見が違う自分はダメなのかな"
と思い、場の同調圧力に屈し、うっかり心にもない虚偽の発言をしたらおしまいだ。先ほど話した「こじれた謙虚さからくる謙遜」の心理だし、嘘はすぐバレる。
こんな時はとことん正直に話した方が良い。

今回、このようなことを考えるきっかけになったのはポール・デスモンドがチャーリー・パーカーにインタビューした記事を読んだから。
詳しくは僕のSNSへのリンクを参照してください。
彼らは偉大なミュージシャンであるが、この会話の中に自らを謙遜した発言がある。しかし、すかさずお互いにツッコミを入れ、ジョークとして処理している。そんな二人の関係が、とても良い関係だなと思った次第。

褒められたらそれは単純にありがたい。
逆に叱られたら自分の弱点がわかるのでありがたい。
いちばん怖いのは無反応。しかしこれもまた、それを機に考える機会を与えてくれるので成長につながる。
他者への称賛は正直に。
皆がそう思っていれば、不協和もなくお互い心地よく歩んでゆけるのではないだろうか。

suganosan_prof.jpg菅野 浩(すがの ひろし)プロフィール
アルトサックス、クロマチックハーモニカ プレーヤー
小編成から大編成まで活動の幅は広く、自己のバンド「Totem Pole」「Alto Talks」「Landmark Blue」の他、「Gentle Forest Jazz Band」「in's」などのバンドでも活動中。
近年ではクロマチックハーモニカも演奏する。

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