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感染症と記録媒体(Z BLOG 菅野 浩)

先日、蓄音機は感染症のコレラが流行した時期に誕生したことを知ったので、少し掘り下げて調べてみた。

蓄音機が誕生した時代背景

まず、この時代の出来事を感染症と蓄音機を中心に時系列を追ってみよう。
1877年、トーマス・エジソンによって蓄音機は発明された。
日本では明治10年、西南戦争の頃で、日本で3度目のコレラが大流行した時期。
蓄音機はその後、エミール・ベルリーナによって改良され、1887年に実用化された。
日本でコレラがいくつかの波を経て収束したのは、1920年頃。
1920年頃といえばスペイン風邪の世界的流行(1918年~1921年)。
日本で最初にコレラが発見されたのは1822年というから、およそ100年にわたって大流行しては収まるを繰り返していたことになる。
ちなみに世界で最初のコレラは1817年。1923年までに6回の世界流行=パンデミックが起きていたという。
第一次世界大戦終戦は1918年。
明治元年は1868年なので、1860年代~1920年頃の時期は、日本も世界も社会のシステムが目まぐるしく変化する中で感染症と闘っているその最中に蓄音機が誕生したことになる。
電話機もこの時期に実用化されている。

ここには何か因果関係があるのだろうか。

想像するに、感染症のために人と人の距離を保たなければならない状況下であっても、人々は日常的な欲求を満たしたい。
これらの欲求を満たすものが電話機であり、蓄音機であったのではなかろうか。
電話機は、同時性を備えた遠隔会話システム。
蓄音機は、再現性を備えた遠隔音楽鑑賞システム。
まさにリモートシステムだ。
僕らは蓄音機に始まる"音"の記録媒体によってジャズの巨匠たちの演奏を聴き、彼らの音色やニュアンス、ノリなどを研究することができる。再現性は時代を超える。
記録媒体の役割はとても大きい。

今の音楽を記録して後世へ残す

そして今、100年前よりもはるかに高音質で記録することが低予算で可能になり、同時配信により同時性も実現された。映像までも伴って。
ここへきて、新型コロナという感染症のパンデミック。
行政によるアーティストへの支援策は、録音、撮影、配信等に対し給付金なり補助金を出すという。
コレラの時は蓄音機による遠隔音楽鑑賞を人々は望んだが、いまは映像も加えた遠隔ライブ鑑賞を望んでいる。

歴史を振り返ると、今はまさに大きな転換期に直面しているのは事実で、第二次大戦以降では最大の転換期。
ならば、第二次大戦以降に築かれた社会システムが変わってしまう可能性も孕んでいる。
コロナ前の状態に戻ろうとするのではなく、
「新しい生活様式」を政府から求められたから順守するというのでもなく、
せっかくこの時代に生きているのだからこの時代の利点を最大限に活用し、コロナ前にはやらなかったことに取り組むことがとても素直な流れではなかろうか。
今ある記録媒体で今の音楽を記録して後世へ残す。ここに集中することを望まれているようにも感じる。

100年後に、
「2020年代の人達のライブ映像は客の拍手とか無いけどなんで?」
「新型コロナパンデミックの時代だったからだよ」
「宅録映像も多いよね」
「みんなそればっかりやってたらしいからねー」
という会話が未来の若者のあいだで交わされるだけでも意味あることだと思う。

100年前、蓄音機に夢中になった人も、
今現在、録音や撮影に夢中になってる人も、
100年後、新たな遠隔システムに夢中になる人も、
みんな同じだ。
記録を残すこと。その役割は大きい。

という訳で、様々な記録媒体に興味津々の日々です。
もちろん人々の記憶という記録媒体に記録を刻む生ライブは、かけがえのないものなんですけどね。

suganosan_prof.jpg菅野 浩(すがの ひろし)プロフィール
アルトサックス、クロマチックハーモニカ プレーヤー
小編成から大編成まで活動の幅は広く、自己のバンド「Totem Pole」「Alto Talks」「Landmark Blue」の他、「Gentle Forest Jazz Band」「in's」などのバンドでも活動中。
近年ではクロマチックハーモニカも演奏する。

公式サイトのライブスケジュールはこちら!

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